深田 上 免田 岡原 須恵

ヨケマン談義11.昔懐かしふるさとの味

11-43.カンネ(葛根)

 読者諸氏はカンネをご存知だろうか。カンネ(かんね)は熊本県の方言らしいのだが、奥豊後地方(大分県の豊後大野市あたり)でも使われている。カンネは、葛の根である。風邪ぐすりで有名なあの漢方薬の「葛根湯」もこの葛の根からつくられる。それよりも葛粉・葛餅・葛饅頭の方が身近かも知れない。

 鹿児島県にお住いの佐々木さんから、「こどもの頃、黒原山でカンネを掘り、白いデンプン液を絞り、飲んだ」との思い出の便りを頂いた。筆者も同じ体験がある。カンネ(葛根)は、図1に示すように勢いよく雑草や低木に覆いかぶさり、這いずりまわる蔓性の植物であるが、根っこ(図2)は大人の太もも位の大きさにもなる。この根を掘り出すのも、掘り出してから裂いて中のデンプン液を絞るまでも大変であるが、液を蒸発させ乾燥すれば葛粉となる。代表的なものが、奈良県吉野地方の吉野葛、葛粉・葛餅である。

葉と花 カンネ
図1.カンネ(葛)の葉と花 図2.カンネ(葛根)

 戦時・戦後の食糧難時代には当たり前の行動であり、図3に示すような「葛まんじゅう」や図4の「葛餅」、高級で手間暇のかかった見た目もきれいなおやつは口にすることも出来なかった時代であった。(図3と図4の写真は、NHK料理のレシピから)

葛まんじゅう 葛餅
図3.葛まんじゅう 図4.葛餅の例

 これで、昔懐かしふるさとの味という「ヨケマン談義」を終る。
懐かしさや思い出は各人各様で、まだまだ数多くのふるさとの味があることは想像できる。渓流釣りが好きな方であれば、鮎などの川の恵みの味があるからである。人吉球磨というふるさとの味と書いたが、その境界が、薄れ、どこででも味わえることになりつつある現代、ぜひオンリーワンの味をこれからも継承していって欲しいものである。
ある食通の方の弁、「おいしいものとは、すきっ腹とお袋の味」。




(編者追記)
 「ヨケマン談義」は、あさぎり町中部ふるさと会のHPで「ふるさと探訪」と題して、約1年間を掛けて、80話が掲載されたものに加筆されています。
今回で、「ヨケマン談義」全87話を終わるにあたって、書下ろしで、番外編を書いていただくことになりました。題して、人吉球磨の「となりまち」東西南北。
5回に分けて掲載しますので、引き続きお付き合い下さい。
↑ 戻る 

談義11-42へ | 目次-2 | 番外編・東1へ